【⭐️3】霊感検定
【霊感検定】織守きょうや 作:講談社文庫 2016/8/10(個人的評価:⭐️⭐️⭐️☆☆)
深夜のバイト帰り、バス停の人の列に並び最終バスを待っていた藤本修司(ふじもと しゅうじ)は、見知らぬ少女に突然腕を引かれ、バスに乗りそびれてしまう。
やむを得ずタクシーを拾うも、運転手から「ずっと見てたけど、もうバスも終わってるし誰も並んでないのに回り込むみたいにして突っ立てたから酔っ払いかと思った」と言われ、話の噛み合わなさに困惑するばかり。
翌日、私立九条(くじょう)高校に転校した修司は、昨夜自分の腕を引いた少女が羽鳥空(はとり そら)というクラスメイトであったことを知る。
浮世離れした雰囲気を纏い、クラスの人間も彼女とはつかず離れずの距離を置く。
実は彼女は、学校では有名な霊感少女だった──というお話。
修司が主人公で空がヒロインで──かと思いきや、途中、突然全くの別人(筒井・夏目)視点で話が展開したりと、なんとなく話の筋がふらふらして一貫性が感じられないというか。話の着地点が不明瞭でそこまでの足取りもふわふわと覚束ない、結局、読み終えた後「この話を通じ作者は何を書きたかったのだろう?」と首を傾げてしまった。
大まかには、修司と空の距離感を描きたかったのだろう……とは思うものの、いかんせん、第三章から登場する筒井遥(つつい はるか)が本当に非の打ち所がなさすぎて、強い霊感がある訳でも何か取り立てて目立つ活躍がある訳でもない修司の、主人公としての存在感を完全に喰ってしまっていて何とも。
個人的には、この筒井が活躍する第四章が本作で一番印象深く、涙腺を刺激されまくったお話でした。他の話もこれくらい濃密だったらなぁ……と思わないでもないというか、いっそ主人公は筒井で良かったのでは、と思ってしまったほど(それくらい、修司にキャラとしての魅力がない)。
修司のみならず他キャラにしても、ヒロインの空は、霊感が飛び抜けて強い設定をしても読み進めるほどに『フシギちゃん』感にあざとさを感じてしまうし、その空に異様に執着する伐晴臣(ばつ はるおみ)は終始、修司に敵意をむき出しにする不快なだけの存在、夏目歩(なつめ あゆむ)は誰からも好かれる人好きするタイプのように描写されてはいるものの、その実、チャラついた軽いノリの裏側に筒井らを都合の良いように利用するなど計算高い面ばかりが目に付き、個人的には到底好きになれないタイプ──と、相対的に見ても筒井の株ばかりが上がる状況。
とはいえ(好感度云々を抜きにすれば、好きにも嫌いにもなれるのは)それだけキャラの個性がしっかり確立されているということでもあるのでしょうし、本作は作者のデビュー作でかつ続編もあるようですので、修司(と作者)の成長物語として長い目で見れば、あるいは……? なのでしょうか。
正直、全体的な評価は星2くらいが妥当かと思いましたが、筒井メインの第四章と、最後にきた予想外のオチに星1加点。
特にオチに関しては(良くも悪くも終始盛り上がりに欠ける印象だったので)まさか最後の最後にぶっ込んでくるとは思わず、すっかり油断しきってました。
⚠️以下、ネタバレ注意⚠️
しかし、『笛子が実は幽霊だった』というオチにしても、幽霊にコーヒーを淹れる(生者の世界に物理的に干渉する)ことは可能なのか? という疑問は残るかなぁと。
そうでなくとも、案外うやむやにされた部分が多く(海の件とかは多分、2巻以降で触れられるのかなとは思いますが、例えば『自殺霊を成仏させるのは困難 → 側で見ていた言葉の通じる霊が「自分の願い事を訊いてくれたら一緒に成仏させてあげる」と持ち掛ける → その霊の願い事を叶えたところ、その霊が自殺霊と重なり一緒に成仏してめでたしめでたし』……とか、ついさっき難しい手合いだと言っていたばかりの自殺霊その除霊方法がそんな適当な感じでいいの? とか)肝心な部分をはぐらかされてしまったような消化不良感がじわじわと。
一方で、「心霊スポットに落とし物をすると場と持ち主が物を介し結び付き霊に呼ばれてしまう」だとか「仏飯には除霊効果がある」などの豆知識(?)が増えた点は素直に喜びたい所存。
我が家、仏飯は水分が抜けカラカラになるまで供え、そのまま処分しちゃうんですよね……ちゃんと食べたほうが良いのかしら。