【⭐️3】妖怪探偵・百目(1)朱塗の街
【妖怪探偵・百目(1)朱塗の街】上田早夕里 作:光文社文庫 2014/7/20(個人的評価:⭐️⭐️⭐️☆☆)
今から十数年前、突如街中に出現した数多の妖怪を封じるべく、人間たちは街を取り囲む全ての建物を朱に塗り札を貼り、強力な結界を張ろうと試みた。
しかし、大地への敬意を失い霊力をも失いつつある現人類に、太古の呪文を扱うのは不可能──結果、妖怪と人とが入り乱れることとなったこの地方都市は『真朱(しんしゅ)の街』と呼ばれるようになり、奇妙な共生関係が構築されたのだった。
相良邦雄(さがら くにお)はある事情から真朱の街へ流れ、今はとある探偵事務所に身を置いている。
そこは、絶世の美女にして全身に百の眼を持つ妖怪・百目(ひゃくめ)が所長を務める、妖怪事件専門の探偵事務所で──というお話。全5話から成るオムニバス。
『探偵』と言いつつ、俗に言うミステリ小説のような犯人捜しやトリック云々といった仕掛けや展開はまったく無く、真朱の街で起こる妖怪と人間の奇妙な生き様が描かれる自称〈妖怪ハードボイルド〉だそうな。うーん、ハードボイルド? ……なのかなぁ……?
先に読了した【夜の写本師】その文体が荘厳過ぎたからか、本作の文体はハードボイルドを自称するにはあまりにノリが軽く思えてしまい、しばらくは内容が頭に素直に入らず滑り気味だった印象。
何より、メインを張る相良が、かなり、こう……煮え切らないというか、自己憐憫に浸る自分勝手な人間で、言動に相当イライラさせられる。
自分が犯した罪から自暴自棄になり長生きする気もないと言いつつ、百目に寿命を吸われる際には「たったこれだけの事でそんなにも寿命を吸われるのか」だの何だのとごねては値切ろう(?)としたり、かと思えば「死ぬときは百目に口づけで寿命を吸われて逝くのが本望だ」と欲剥き出しで望んでみたり、自責の念に駆られる一方で自分の過去の愚行を何とか弁解、正当化しようとしたり等々──卑屈で我が儘でぶれぶれで、ある意味、非常に人間らしいキャラだと言われれば、まあそうなのだろうという印象ですけど……しょうもない妬心であれだけの罪を犯しながら自らは己の寿命勘定にこだわるという身勝手振りに、どうやっても好感を持てるキャラではない。
続き物のようですので、相良の成長と贖罪の物語──みたく、長い目で見る必要があるのでしょうが。
一方、じゃあその上司たる百目が魅力的なキャラなのか? というと、これも個人的には首を傾げてしまう程には微妙なところ。絶世の美女で、妖怪らしく適当で斜に構えていて……と、あまりにステレオタイプなキャラすぎて、百目だからこその存在感・魅力を感じられない。妖怪酒場のマスター・牛鬼(うしおに)の方がよほど存在感も魅力もある(伝わる人にしか伝わらないと思いますが、自分はゲーム【KOWLOON'S GATE クーロンズ・ゲート-九龍風水傳-】に登場する龍城飯店のマスター・リッチを想起しました)。
このように、メインを張る2人(百目・相良)のどちらにもこれといった魅力を感じられないからか、次巻に繋がる伏線があちこち張り巡らされているにも関わらず、次も読みたい、という気持ちがどうにも湧いてこない。
お話自体も、鎌鼬がヒューマノイド(ロボット)に恋する第四話などはユニークな設定だと感じましたが、それが今一歩話の面白さに繋がりきっていない印象というか。全体的に、細かな部分で有耶無耶にされているところも散見され(第三話で、依頼主が防御の呪を使ってまで情報提供を拒んだ動機が不明というか弱すぎるように感じられたり)何とも可も不可も無しといった印象。
キャラ&ストーリーだけなら星2評価の印象ですが、オカルト関係の設定が興味深かったので星1つ加点。
最も、2巻目以降にも手を出すかどうかは……かなり微妙なところかなぁと。