【⭐️1】ヘルハウンド 犯罪者プロファイラー・犬飼秀樹
【ヘルハウンド 犯罪者プロファイラー・犬飼秀樹】青木杏樹 作:メディアワークス文庫 2018/11/24(個人的評価:⭐️☆☆☆☆)
帝真大学で准教授を務める犬飼秀樹(いぬかい ひでき)。
寝坊で抗議をすっぽかすなどろくでもない男だが、彼は若かりし頃FBIの特別行動科学捜査班に籍を置き、現在は犯罪心理学の見地から凶悪犯罪者のプロファイリングを行う犯罪者プロファイラー。
【黒妖犬(ヘルハウンド)】の異名を持ち忌避される犬飼に捜査協力を依頼するのは、幼馴染みで副検事の諭吉龍一郎(ゆきち りゅういちろう)。
男子高校生2人が女子高生ひとりを拉致・暴行した挙げ句殺害した事件において、起訴するに辺り遺体と事件状況に違和感を覚えたというのだが──というお話。
正直、犬飼も諭吉も35歳といういい歳した成人男性でありながら、言動がとにかく幼稚で、いちいちやり取りが痛々しい。
諭吉が犬飼のことを仕事中でも「ヒデちゃん」呼びするのホントしんどいし、犬飼の素っ気なさに「自分はヒデちゃんのこと親友だと思ってるけど、どうせヒデちゃんは自分のこと何とも思ってないんでしょ!」みたく駄々コネはじめた時は流石に香るBL臭に鳥肌が立ったほど。犯罪心理学を扱った重厚な内容を期待して手に取ったのに、なぜ自分は成人男子同士の子供じみた痴話喧嘩を見せつけられているのかと。
そうでなくとも諭吉、やたらテンション高くいい子ぶってるかと思いきや突然癇癪起こしたり闇を見せてきたりと、終始情緒不安定過ぎて怖い。
そんな主役2人のやり取りを追うだけで既に十分頭が痛いというのに、次々現れる登場人物らもほぼ全員クセが強すぎ(外見14歳で成長が止まっている犬飼にぞっこんでヒキガエルを好んで食す成人女性に、犬飼や諭吉の胸や尻をやたら揉みたがるセクハラ老大学教授等々)て胸焼け待ったなし。今思うと、よく読了まで我慢できたな……と、自分を褒めてあげたい気分。
とにかく、登場人物同士の掛け合いが幼稚で下品。
そういうキャラがひとりふたりなら「ああ、そういう設定のキャラなのね」で済むのでしょうけど、主要登場人物全員こういうノリだから本当にどうしようもない。
見た目14歳だけど実年齢は20歳越えてる西城が大人の女性である事を警備員に証明するに、なぜ『犬飼と抱き合いキスするところを見せつけてやろう』という発想に至るのか意味不明過ぎる。公衆の面前で堂々とさかるなやおぞましい。
じゃあ、そんな痛々しい登場人物らに辟易しながらも先が読みたくなるほど話が面白かったのか──というと、これもまた何とも微妙。
一部、心理学的見地? からの専門的な(「人間の男性は遺伝子的に女性より脆く、故に男性は女性を服従させ自分の方が強いと錯覚することで自分の存在を証明できる」などといった)話は興味深く読めたのですけど、恐らくそれらは参考文献からの引用と思われ。
肝心の創作と思われる部分については、犯罪心理学の見地から犬飼と犯人の高度な駆け引きが展開される──ことを期待していたのに、特にそういった印象を受けることもなく。
さも最もらしくイーブルテクニックだの何だのと専門用語を並べ立てていますが、被疑者の警戒心を緩めるために自分の胸の内を曝け出すなど、特に専門知識が無くとも何となく理解できる手法で展開されるやり取りが殆どだし、「えっこの流れでなんで唐突に自供したん……?」と腑に落ちない会話もままあり、カタルシスを得るにはほど遠い構成。
自分が犯罪心理学云々に詳しくないから,本作の内容(その凄さ)が理解できないのだろうか……という可能性も否定はしませんが、しかし、同じく心理学をテーマにした刑事小説【行動心理捜査官・楯岡絵麻】シリーズではエンマ様と犯人の駆け引きにヒヤヒヤしたり十分なカタルシスを得ることもできたので、多分に作者の筆力の問題もあろうかと。デビュー作だそうですし。
⚠️以下、ネタバレ注意⚠️
犯人の犯行動機が腑に落ちなかったり、そも濵幸三(はま こうぞう)も西城瑠衣(さいじょう るい)も何故殺害した人間を食べたのか? 等々、その辺りの特異性に特に触れられることもなく、しれっと素知らぬ顔で話が進んでいくので「え、なんで? 話の根幹に絡んでこないなら、別にその件(設定)要らなくない?」と疑問符だらけ。
犯罪心理学をテーマにするなら、そういう、常人には理解し難い部分に切り込んでこそ、だと思うのですが──
大体、犬飼の死体マニア設定も必要だったのかなぁと。
開幕、遺体を恋人だの被疑者を恋のライバルだのと興奮し騒ぎ立てる様子にドン引き待ったなし、にも関わらず、この強烈な個性に焦点が当てられたのは最初の事件だけで、どうにもただ奇抜さを狙ったインパクト重視の設定に過ぎないというか──それを言ったら、他キャラの歪んだ設定も総じて必然性が感じられず、ただただ薄っぺらいキャラづけにしか思えなくて、それが余計にこの作品を安っぽく見せてる印象。
主人公の異常性癖や犯人の理解不能な犯行動機・行動が理解できないということは、この作品の受け取り方としてはある種正しくもあるのかもしれませんけれども(常人には理解できない異常性に焦点を当てた作品である、と見れば)、それで自分(読者)が納得できるかどうかはまた別問題というか。
話の仕掛けとしても特に驚きも面白みもなく、なんとなく読んでる内になんとなく決着が付いてしまい、消化不良感が凄まじい。
どうもシリーズものらしい? のですけど、次は無いかな。
ラノベの定義がよく分かりませんが、本作をしてラノベとジャンル付けするなら私は多分、もの凄くラノベが合わない体質なのだろうと痛感させられた1冊。