【⭐️2】コズミック 流
【コズミック 流】清涼院流水 作:講談社文庫 2000/4/1(個人的評価:⭐️⭐️☆☆☆)
1994年1月1日午前0時1分、マスコミ各社、警察庁、日本探偵倶楽部に『密室卿』を名乗る人物から「今年、1,200個の密室で1,200人が殺される」という犯罪予告がFAXで届けられる。
果たして元旦未明、平安神宮で第一の殺人事件が発生。
初詣の参拝客でごった返すなか発生した不可解な──本殿へ続く列に並んでいた人間が被害者であり、しかもその背中には被害者の血で文字が書かれていたにも関わらず、誰一人として犯人も犯行現場も目撃していない、凶器も見つからない──首斬り事件を皮切りに、日本全国各地で首斬り連続殺人事件が連鎖するのであった──というお話。
2作(コズミック/ジョーカー)各上下巻の全4巻からなる長編で、しかもちょっとかなり特殊な構成? の作品らしく(普通なら『①上巻』→『①下巻』→『②上巻』→『②下巻』と読むところ、本作は『①上巻』→『②上巻』→『②下巻』→『①下巻』と読むのが理想だとか何とか)まだ1作目上巻の本作しか読み終わっていない段階で、どうこう言える感じではないかなと思うのですが──
本作に収録されているのは密室一~十九のケースで、各話20頁前後と超短編。
にも関わらず、各登場人物がどんな性格でどんな生い立ちなのか等々、最低限掘り下げてあるので、ただの「密室殺人の関係者/被害者」で終わらせていないし、数少ない登場人物の中でも「誰が次の被害者なのか?」を予測させ裏切る(といっても、巧妙な伏線やトリックで読者の予想の裏をかいてくる、というより、地の文で読者の予想を強引に誘導する、といった体なので釈然としないところも無きにしも)展開もあるしで、読者を退屈させない展開はなかなかの手腕ではないかと。
一方、第一の事件発生時点で既に一般人の関係者が「はッ!? これはもしや密室なのでは……!!?」と勘付くというのは、個人的にかなりの違和感があるのですが──
通常、推理小説などで言うところの『密室殺人』は施錠された屋内を指すと思われますけれども、本作では「人垣や霧、吹雪などで視界が奪われ逃げ道も無いのなら、屋外でも広義では密室と言えるでしょ!」という、なかなかのトンデモ判定なもと『密室』殺人が発生するので、それをいきなり何の推理経験も捜査経験も無いであろう極普通の一般人が「そうか、これも密室と言えるな!」と結論付けるのは……少なくとも自分が当事者だとしたら、そこまで察することはできなさそうだけどなぁと😓 既に密室卿による犯行と思われる密室殺人が何件も発生した後ならともかくとして。
故に、「密室といっても施錠された屋内の事だけじゃないよ! こういう条件を満たせばどこでも密室と言えるんだよ!」という、作者のこじつけとしか思えなくて──そこは少々語り口が強引に過ぎた印象。
あとはまあ、個人的な好みの問題でもあるのですが、序章での密室卿その口調が、何とも……🤢 90年代の日本が舞台にも関わらず、やけに時代がかった一人称『予(よ)』にも若干引きましたけど、葉に弾かれた雨粒が頬に当たる様をして「(雨粒が)頬に接吻する」といった、何故ここでこの表現を用いる必要性があったのか、作者が唯々己の表現力に陶酔したかっただけなんじゃないか感甚だしい地の文にも寒気を覚え、正直、この序章時点で読むの止めようかなと思った程でした🤢
本編内でも青春をわざわざ「青い春(ブルー・スプリング)」と表現したり、繰り返される殺人事件に解決の糸口さえ見つけられない警察を「捜査陣(ピエロたち)」と揶揄してみたり、他にも「少年時代(ボーイズ・ライフ)」だの「魔法の世界(マジック・ワールド)」だの「栄光の手(ハンド・オブ・グローリー)」だのと、いちいち漢字に横文字のルビを振るスタイルがキザったらしくて、もの凄く鼻につくというか……それとも90年代当時(※本作の初出は1996年、改題・二分冊化したのは2000年)なら、こういう表現も特に違和感なかったのでしょうか?
もっとも、Amazonの『著者について』を読むと今まで見た事が無い程の情報量、小説家ならぬの「大説家(たいせつか)」を自称する件なども大概痛々しいなと思いつつ、「TOEICスコア満点を5回獲得」とわざわざアピールするあたり、先の日本語表記×英語ルビスタイルも、物語を語るに必要性があったから敢えてこの表現を用いた──のではなく、単に自分の英語力をひけらかしたかっただけなんじゃないかと邪推してしまうなぁ……どうなんだろう。
年代ギャップと言えば、『バ・ビ・ブ・ベ・ボ』を『ヴァ・ヴィ・ヴ・ヴェ・ヴォ』と表記するのもそうなんですかね? 例えば「ヴェランダ(ベランダ)」とか「スカイダイヴィング(スカイダイビング)」「エレヴェーター(エレベーター)」等々。
80年代以前の作品ではよく見かける印象ですが、90年代後半の作品ではいささか時代錯誤気味に感じられるような──でもまあ、時代性といえば時代性なのでしょうから、あまり突っ込むべきではないかもしれませんね😓
⚠️以下、ネタバレにつき閲覧注意⚠️
とにもかくにも、全4巻の1冊目たる本作は、本当にただただ19件の密室殺人が発生しましたよー、というだけの話なので、とても評価をくだせる段階には無いのですが。
作中、約2名ほど事件の真相や真犯人あるいは犯行動機に気付いたっぽい(けど、結局それに触れることなく殺されてしまった)人物もいましたけれども、推理マニアの読者ならあるいは、彼ら同様、現時点でそれらを見抜け……るのかなぁ?
自分はただただ不可能犯罪としか思えなかったし、麻生の件からして「まさか、密室卿を名乗る亡霊が憑依し犯行に及んだ、とかいうトンデモなオカルト展開じゃないよ、ね……?」と、解決編が肩透かしに終わりはしないか、ネガティブな意味で、もの凄く震えているのですけれども……!
ちゃんと現実的かつ納得のいくトリックで話の片をつけてくださいオネガシャス!