【⭐️1】ジョーカー 清

ジョーカー 清清涼院流水 作:講談社文庫 2000/4/1(個人的評価:⭐️☆☆☆☆)


 関西在住の推理作家らが所属する『関西本格の会』は毎年2回、京都府内の旅館・幻影城で合宿を行っていた。

 会員のひとりである新進気鋭の作家・濁暑院溜水(だくしょいん りゅうすい)は、その合宿で「ノックスの十戒」「ヴァン・ダインの二十則」を踏まえ『推理小説の構成要素三十項』を網羅し、この幻影城を舞台に、実在の会員らを登場人物とする実名小説の構想を発表するが、翌日、『芸術家(アーティスト)』を名乗る人物により、その構想に則ったと思われる奇怪な殺人事件が発生する。

 休暇のため幻影城を訪れていたJDC(日本探偵倶楽部)所属の探偵・螽斯太郎(きりぎりす たろう)は直ちに応援を要請、日本屈指の名探偵らと警察も事件解決に乗り出すが、解決の糸口も見出せぬまま、嘲笑うかのように芸術家による犯行が重ねられてゆくのだった──というお話。


 作者曰く「【コズミック 流】の後に本作を読むのがオススメ!」との事だったので読了。変則的ながらも続き物ということで前作?コズミック 流に引き続き密室卿の事件……かと思いきや、JDCの存在など世界観は同一ながらも、まったく別の事件『幻影城殺人事件』を取り扱った長編もの(の前編)


 ただ、作者はよほど言葉遊び(という名の駄洒落というか何というか😓)がお好きなのか、前作の「青い春(ブルー・スプリング)」よろしく特に意味が見出せない日本語表記×横文字(英語)ルビの乱用、「狂人の凶刃」だの笑えない駄洒落、頬に雨だか雪だかが当たるたび決まって「頬に接吻」という比喩表現を(前作に引き続き)何度も用いたりと、多分に個人的な嗜好性の問題はあるにしても(少なくとも自分にとっては)ただの自己陶酔としか思えない、知性もユーモアも語彙力も感じられない痛々しい表現の数々は正視に耐えない。

 『言(ことば)』が『迷』うをして『謎』と呼ぶ──とか、さしてひねりも無い見たままの言葉遊びを、一度二度ならまだしも何度も何度もしつこくドヤ顔で繰り返すなや恥ずかしい。


⚠️以下、ネタバレにつき閲覧注意⚠️

 百歩譲って螽斯(きりぎりす)という名字が突飛すぎるのも、危険に身を晒す探偵業とあっては偽名を使うのも当然か……と無理矢理納得しようにも、後に元相棒の名字が有戸(ありと)だと判明するや、単に『アリとキリギリス』って言いたかっただけやろ! と呆れ果てるしかないという有様。


 何より、作者の気配が匂う(作者の姿がちらつく)作品を嫌う自分が最もげんなりする『読者への挑戦状』が初っ端叩き付けられた時点で「あっ(察し)」となりはしたのですが──何かこう、こういう自意識過剰な作家の作品が自分はやっぱり大の苦手なんだなぁ、と本作を読了し改めて痛感。

 作家が雄弁であればあるほど、その内容は本人が言うほど大したことないんですよね。だから余計に寒いというか痛々しいというか🤢


 本作においても、日本はおろか世界にも通用する超絶凄腕の名探偵たち! と高らかに謳い、それぞれに『俯瞰流考』だの『消去推理』だの『ファジィ推理』だのと厨二病感満載のスキル名を与えてはいるものの、いざその推理過程を辿るに、特にもの凄く頭がきれる訳でも察しが良い訳でも冴えた推理が飛び出す訳でもなく、如何にも即解決させてみましょうと言わんばかりに思わせ振りな台詞を口にしつつも、肝心の捜査は一向に進展せず次々事件が起こる──と、字面ばかりで本当に有能なのかこの人たち? と訝しんでしまわざるを得ない展開にも閉口。

 先に酷評した【アイアムハウス】と同じく、言葉で装飾しまくり表面上は繕おうとはしているものの肝心の中身はすっかすか、な印象で──


 あとは、作者の先入観による誘導が強引過ぎて、各人の言動はおろか地の文を読んでいてすら「いや、そうは思わん(ならん)やろ」と突っ込みたくなること多々🤢


 探偵「こうこうこういう推理で導き出した犯人はAだ!」

 ワイ「いや何なのそのこじつけにも程があるトンデモ推理は(困惑)」 

 地の文『この推理こそ真相を射たと確かな手応えを覚えた探偵であった! しかし──』

 事件発見者「今、(先程犯人だと指摘された人物が)4体で発見されました!」

 探偵&一同「な、何ィ!!?」

 地の文『何という事だ! この狡猾極まる犯人は名探偵の超絶推理すらも超越する程の天才的知能を有するというのか!?』

 ワイ「いや、その推理絶対外れてるの知ってましたけどね?」


 みたいに、作者のミスリードする気満々さに反し目論見が悉く失敗してる感の凄まじさと言ったら……!


 そんな、「言うほど大したこと無いのに、さも、もの凄いことであるかのように大袈裟に書き立てる(例えば、名探偵をして「超絶」だの「世界に数人しかいないSランク探偵」「推理の貴公子/貴婦人」だのと、とにかくキャラの掘り下げも無く表面上だけの陳腐な言葉ばかり並べ立てるので、もの凄く安っぽく聞こえてしまう)」に始まり、そも登場人物らの立ち振る舞いも頭おかしいとしか言いようが無い。

 会員のひとりが小学生の娘を連れだって合宿に参加しているのですが、連続殺人事件が発生しているというのに、幻影城に勤める執事(従業員)の息子(中学生)と大人の目の届かない場所で平気で2人きりで遊ばせたり、その娘にしても、大人たちの配慮から事件の凄惨さをつぶさに知らされてはいないにしても、知り合いが次々死んでいるらしい事には気付いておきながら、執事の息子とキャッキャウフフと無邪気に遊んでいるとか、いやどうなんだろう。

 保育園児・幼稚園児ならまだしも、小学校高学年~中学生なら人の死がどういうものかもある程度は理解できるんじゃないか、そうでなくとも、この状況下で「親や自分も殺されてしまうかもしれない」と露程にも思っていないのなら、なかなかに頭のネジがブッ飛んでるとしか──


 他にも、凄惨な連続殺人事件を扱うミステリーものでありながら、事件解明に乗り出した探偵らの一部には緊張感がまるで無く、それどころか台詞末尾に「♪」や「♡」「(笑)」が飛び交うなど、これまた何の冗談かとどっ白け。ラノベならまだしも、こういうジャンル・作風でこの表現を用いるのは、余程の意図が無い限りは空気詠めないにも程があると思うのですが……実は……何らかの意図が、あったりする……のかなぁ……?


 何にしても、作品自体の出来は元より、その端々からありありと匂ってくる作者の自信過剰さ(傲慢さ)に胸焼け待った無しな1作でございました🤢

 残り2冊ジョーカー 涼コズミック 水でこのネガティブ極まる低評価を思い切りひっくり返して欲しいところ……なのですけど、うーん、どうなのかなぁ。

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