【⭐️1】アイアムハウス
【アイアムハウス】由野寿和 作:幻冬舎 2024/9/30(個人的評価:⭐️☆☆☆☆)
世界遺産である藤湖を臨む閑静な高級住宅街・十燈荘(じゅっとうそう)で凄惨な一家殺傷事件が発生する。
世帯主である父親は胃まで大量のゴルフボールを詰め込まれ窒息死。
妻は業務用冷蔵庫に押し込められ凍死。
長女はワイヤーで拘束されたまま浴槽に沈められ溺死。
唯一の生存者である長男も、ゲーム用配線コードで絞首され意識不明の重体──
この異様な殺人事件に、一人の刑事が単身捜査に臨む。
辣腕を振るう捜一課長をして「やつが介入すれば24時間で勝負がつく」と言わしめる県警一の切れ者でありながら、その異様な風貌から『死神』と呼ばれ疎まれる刑事・深瀬肇(ふかせ はじめ)。
現場に先行していた新人刑事・笹井幸太(ささい こうた)は、深瀬に捜査のサポートを申し出るのだが──というお話。
いやはや、なんと言ったら良いのか……文章自体は平易(でも誤植と思われる箇所がちらほら。特に人物名の誤植は「えっ急に場面転換?」と混乱を来してしまった件。読んだのは初版本だったので増版以降や文庫化時には修正入ると思いますけれども)でさくさく読めはするものの、読み終えても何の感慨も湧いて来ない、至極無味無臭な内容だったなぁと😓 正に『虚無』のひと言。
登場人物も出来事も色々と要素盛り込みすぎ、その割に諸々薄っぺらく広げまくった風呂敷の畳み方も至極雑。
何より、まさかのオチ(トリック)に「この設定なら何でもアリになっちゃうよなぁ😩」と肩透かしもいいところで、すっかり白けきってしまい。
昨今のネットワーク時代──匿名性を笠に着て誹謗中傷がエスカレートする──その恐ろしさをして「指先ひとつで人殺しができる」と警鐘を鳴らしたいであろう意図も窺えましたが、これも既に擦り倒されてるテーマというか、本作ならでは、この作者ならではの切り口が見出せず、「まあ……よく聞く話ですよねぇ😓」で終わってしまうのが何とも。
⚠️以下、ネタバレにつき閲覧注意⚠️
総じて「もの凄く思わせぶりな前振りを散りばめてる割に、次第に明らかになる真相が大体貧相」のひと言😩
深瀬の「家との対話」もそう(16年前の事件そのトラウマから幻聴を煩っている──と思わせておいて、単に秘密裏に相棒と連絡を取り合っていただけ)だし、野沢の、明らかにヒール的な立ち位置にくせ者かと思いきや深瀬の秘匿された相棒だっただとか、極めつけは絞殺未遂と思われていた春樹が実は自殺未遂だったとか、いやもう何なんだろう……?
浮気を疑われた夏美に刺される前に、事の真相を航季が伝えなかったのもよく分からない。
いや、真実を伝えるも冷静さを欠いた夏美がまともに取り合わなかったのかもしれないけど──春樹にバレるのはまずいにしても、夏美には真相を話しておくべきじゃなかったのかなぁ……などと、突っ込みどころ満載。
真犯人にしてもそうですよね。
一介の花屋に過ぎない堀田が、十燈荘の住民だけならまだしも警察組織の人間まで洗脳していたとか、各住人宅にオリジナルの植木鉢を装った爆発物を仕掛けてたとか、深瀬の相棒を次々殺害していた等々、その辺りの経緯全部すっ飛ばして突然そんな真相明らかにされても、じゃあ「多くの人が洗脳されてただなんて/いつの間にか爆弾仕込んでたなんて、いやあ堀田さんマジ恐いっすね!」で納得できる訳もなく──どうやって住人や警察官を洗脳していったのか、植木鉢の仕掛けが何故ばれなかったのか、深瀬の相棒たちをどうやって病死や事故死に見せ掛け殺害してきたのか、そういう部分の説明や説得を放棄したまま結果だけ提示して話が進むって一体どうなのと。これじゃ、幾ら深瀬が堀田に「あなた天才的犯罪者ですね」と言ったところで「ンどこがァ?(白目)」ってなっちゃう。
幾度も凄惨な殺人事件が発生して尚、地価の下落もなく住人が離れない十燈荘の不可解さをして『藤湖の魅力』で片付けてしまうも、なんとなく歴史のある場所だとか神域だとかもにょもにょ語りはするものの、そも本作をオカルトにしたいのかミステリーにしたいのかその方向性も有耶無耶だから、いや結局何が言いたかったんだろうなと。
最後、春樹にかけた深瀬の「俺は君の『家』になろう」という言葉も、何だか違和感がもの凄い。
タイトル【アイアムハウス(I AM HOUSE)】にかけ上手いこと言った風に纏めたかったんでしょうけど、春樹(と冬加)を自分と間宮の子供だと思い込んでいた後藤が父性から口にするなら未だしも、今の今まで春樹に寄り添うどころか人情味を殆ど見せてこなかった深瀬が急に何言い出すの? 状態。春樹を養子にするつもりなん……?
深瀬にあの台詞を言わせたいのなら、春樹と何らかの接点(例えば亡くなった弟に瓜二つだったとか──や、深瀬に兄弟姉妹が居るような描写は無かったですけど)を作るべきだったのではないか。
上記のように、とにかく外面ばかり取り繕い中身スカスカ、しかもその外面すらも何処かで見た様なものばかり、辻褄合わせもその場凌ぎで奥行き皆無、何ら独自性が見えてこないと、まったくもって無味無臭の1作。
天才的な犯罪者、曰く在りの土地柄、謎めいた刑事──『自分の考えた最高に面白そうな設定』で小説を書きたかったけれど、それらをキチンと掘り下げ描写するだけの技量が備わっていないのではないかと疑ってしまうレベル。
最近は比較的豊かな読書時間を過ごせていたので、久し振りに、読んだことを後悔する程度には虚無感を抱かざるを得ない1作でございました。