【⭐️3】いつか、ふたりは2匹
【いつか、ふたりは2匹】西澤保彦 作:講談社文庫 2013/5/15(個人的評価:⭐️⭐️⭐️☆☆)
小学六年生の菅野智己(かんの ともき)には、不思議な能力がある。
いわく、眠りに就くと猫の体に乗り移れるというのだ。
実藤(さねふじ)家の飼い犬・セントバーナードのピーターとは大の仲良しで、彼のふかふかの脇腹にもぐり込み、一緒にまどろむのが大好き──
そんな中、智己の通う小学校の女子児童三人が轢き逃げに遭う事件が発生。内二人はかろうじて衝突を免れたが、一人は巻き込まれ意識不明の重体となっていた。
目撃者の証言から、昨年、同小女児誘拐未遂事件を起こした男と同一犯であるらしいことが判明。
時を同じくして、刑事を名乗る不審な男が同小児童に件の女子児童に関する聞き込みを行っている場面を目撃した智己は、犯人が、目撃者である二人の女児を狙っているのではないかと推測、猫の体を借りて凶行を阻止しようとするのだが──というお話。
先日感想を上げた【パズラー 謎と論理のエンタテインメント】同様、【七回死んだ男】を切っ掛けに同作家の他作品を読んでみようと手に取った1冊。
こちらも特殊設定もの、しかも書き出しがファンタジー風味でほのぼのとしているため、当初はミステリ小説とは思えませんでしたが──そもそも本作は少年少女向け、いわゆる〈ジュブナイル〉作品だそうで、確かに、文字のポイント数も幾分大きく、言葉遣いも比較的平易な印象。
残念なのは、タイトルおよび各章見出しが既にネタバレであることや、主人公が(年齢の割に老成しているため皆から「トモジイ(智爺)」と呼ばれているにしても)小6にして既にこんなにも鋭い推理を展開したり人情の機微に聡くあれるものか? という違和感が終始拭えなかったところ。……とはいえ、ネット上(相手の顔が見えない状況)にて、たまに言動から「中高生くらいの子かな?」と思いきや、実はまだ小学生だった、という子には実際自分も会ったことがあるので、あり得ないとも言えないのですけれども。
あと、変わった名字の登場人物/固有名詞が多く(私都〈きさいち〉、忍坂〈おさか〉、東南風〈となち〉、貞成〈さだふさ〉等)、章毎にルビが振られているとはいえ、ちょいちょい読み方を失念しては読書のリズムが乱されるのは地味にストレス。
ゲーム【逆転裁判】シリーズの脚本家・巧舟氏が「(一見、ふざけて名付けたように思える本作のキャラ名をして)ミステリ作品は登場人物が多く名前を覚えにくいのがネックとなるため、覚えやすい名前を心掛けた」といった主旨の話されていたのを思い出し、改めてそうだなと痛感した由。
⚠️以下、ネタバレ注意⚠️
そんな主人公・智己の人生3周目レベルな老成ぶりも去ることながら、事件のキーパーソンとなる3人の女子児童その言動もなかなかにえぐい。
なぜそんなこと(狂言事件)を起こしたのか、後先考えない行動と至極利己的な動機に唖然とするばかりでしたが──しかし、智己とは対照的な、実に小学生らしい未熟さゆえの愚行なのだと、思えなくもない。
他方、智己がなぜそのような特殊能力(眠ると野良猫に乗り移れる)を有するのか……は、やはり作中明かされることはなく、そこは【七回死んだ男】の〈反復落とし穴〉も同様なのでともかくとして、義姉・久美子まで同じような能力を有していたというのは流石に──智己と久美子の血が繋がっているのならまだしも、再婚カップルの連れ子同士(血が繋がっていない)な上、偶然にも同じ屋根の下で生活している……という偶然に次ぐ偶然は、いささか都合が良すぎるかなと。
あとは中盤、挙動のおかしかった担任・川俣には絶対何かある(事件に直接関係してくるキーパーソンに違いない)……と思いきや、単に不誠実な教師、というだけだったのも何だかなぁと。何でもかんでも伏線にし回収すれば良いとは思いませんけど、あれは『正義感が強い熱血漢設定』だからの言動ではなく、面倒事に関わりたくないという無責任な態度に他ならないと感じ、胸糞でしかなかった。
そんなこんなで、全体的に読みやすく、ピーターの正体にも割と早い段階で気付いたりもしましたが、中盤で事件の様相が180度引っ繰り返されたのには流石に面食らいました。
小学生の子にこんな浅はかな行動をとらせ、結果、命を落とす結末というのは、読んでいてあまり気持ちの良いものではありませんが──〈行動と結果〉、それに伴う責任というものについて考えさせるという点では、この容赦無い展開は返って良かったのかもしれません。