【⭐️3】新装版 七回死んだ男

 【新装版 七回死んだ男西澤保彦 作:講談社文庫 2017/9/14(個人的評価:⭐️⭐️⭐️☆)


 高校生の大庭久太郎(おおば ひさたろう)は〈反復落とし穴〉に嵌まる体質である。

 まるで落とし穴に落ちるかのごとく、ある日突然、何の脈絡もなく同じ一日が繰り返される──

 少ないときは二ヶ月に一度程度、多いときには一ヶ月の間に十数回も発現するそれは、発現自体に何らかの条件や規則性がないらしい代わり、当日夜十二時から翌夜十二時までの二十四時間、その一日を決まって九周繰り返すのだった。


 親戚一同が介す新年会で、母姉妹の複雑な家族関係から資産家の祖父その後継者争いに巻き込まれることとなった久太郎だったが、新年会の翌一月二日その二周目に、一周目には起きなかった祖父殺害事件が発生してしまう。

〈反復落とし穴〉体質である自分が干渉しないかぎり、まったく同じ一日が繰り返されるはずなのに、なぜ二周目にして祖父は殺害されたのか。久太郎は困惑しつつも、自身の特異体質を駆使し祖父を救おうと奮闘するが──というお話。


 まず、この作者は読点(、)を使えない呪いにでもかかっているのかと心配になるくらい読点抜きの長文を綴る、あるいは読点代わりなのか句点(。)を乱用するので、言葉のリズム感というか流れというかがなかなか掴めず、読むのに妙に疲れる。

 ……と思いきや、新装版あとがきで誰あろう作者自身が「20年前(※本作は1995年10月初出)の自分は何故こうも極端に読点の少ない書き方をわざわざしたのか」と自ら突っ込まれていたので失笑。

「恐らくは筒井康隆氏の影響(氏に憧れるあまり、そのスタイリッシュでソフィスティケイティッドな文体を表層だけ模倣した云々)だろう」とご自身で分析されてましたけど、まあ、何というか……個々人の(他者には理解されにくい、かもしれない/どうにも譲れない)こだわりって、ありますよねぇ😅

 それにしたって、初稿時点では読点が『ひとつも』無かったという徹底ぶりもまた凄まじい。当時の担当者さんその苦労(?)が偲ばれます。


 他方、あらすじなど確認せずタイトルのインパクトだけで手に取ったので、まさかのSF設定(主人公がタイムリープの異能持ち)しかもコメディ……? コント……? なノリとは思いも寄らず──ノリのみならず、登場人物も皆キャラが濃すぎて開始早々胸焼け待ったなし。

 にも関わらず、読み進めていくと不思議と皆憎めないキャラに思えてくるのが何とも。久太郎の母・加実寿(かみじ)や叔母・鐘ヶ江葉流名(かながえ はるな)なんて徹頭徹尾、人として終わってる感に終始しているのですが。祖父の仕打ちも霞むくらいの醜態振り。


 一方で主人公たる久太郎は友理(ともり/祖父の会社を現在継いでいる母姉妹の次女・胡留乃〈ことの〉の秘書)と2人で本作唯一の良心と言っても差し支えないほどの常識人。特に久太郎は謙遜か卑下か、自ら「頭が悪く食い気しかない」と評するも、作中もっとも頭脳労働してる(し、言うほど頭が悪いようにも思えない気がする)んだけどなぁ。


 とにもかくにも、目次に列挙されてる各見出しそのタイトルで既にまあまあネタバレしてるのはどうなのかなと、思わないでもなかったり。



⚠️以下、ネタバレ注意⚠️


 実は久太郎がループしていたのは1月2日ではなく1月3日だった(久太郎がループしているのは1月2日だと勘違いしていた)のは比較的早い段階で気付いていたので、クライマックスの種明かしもほぼ予想通りの展開で特にこれといった驚きはなく。

 流石に祖父殺害の真相(本当は病死で殺人事件に偽装されていただけだった)は分かりませんでしたが、あれだけ醜い相続争いを繰り広げていた大庭家・鐘ヶ江家の人間が、それでも直接祖父を手に掛けた訳ではなかったのだ、という事実には思わず胸を撫で下ろしました。そこまで人として終わりきっていた訳ではなかったのだ、というような安堵感というか。

 他方、祖父も無事生存ルートに入り万事丸く収まった──と思いきや、最後の最後にすべてを引っ繰り返すあのドタバタ振り。

 ある種、この作品の作風(コメディ寄り)を思えば、こういうオチもありかなと思うものの……いや、どうなんだろうなぁ。取り敢えず、久太郎と友理さんには幸せになってほしいなと思いました(感想)


 評価としては、ユニークな設定とコミカルなキャラの掛け合いが(最初の苦痛を何とか乗り越えさえすれば)楽しかったものの、読点ほぼ無し文章に馴れるまでの相当な読みにくさは如何ともし難く、ストーリーやトリックも可も不可も無くといった印象だったため、総合的には星3あたりが妥当かなぁと。

 ただ、この作品をしてこの作家さんに俄然興味が湧いてきたので、機会に他の作品も読んでみたいなぁと感じた由。

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