【⭐️3】浜村渚の計算ノート

浜村渚の計算ノート青柳碧人 作:講談社文庫 2011/6/15(個人的評価:⭐️⭐️⭐️☆☆)


 近年急増する少年犯罪をして「物事を数値化し事実だけを重んじる科目は人間性を否定しうる」と断じ学校教育から数学が排斥された日本。その現状に憤る数学者・高木源一郎(たかぎ げんいちろう)は自らをドクター・ピタゴラスと名乗り、義務教育における数学の地位向上を目的とした【黒い三角定規】なる数学テロ組織を結成・行動を開始した。

 20年前より、全国すべての高等学校で教育に用いられてきた高木の手掛ける数学教育ソフトを通じ、現在15歳以上38歳以下の国民全員に予備催眠がかけられているという。そして、携帯電話の回線を通じ発信された信号により、高木の命令で当該国民が殺人者になる確率は『同様に確からしい』──

 警視庁に設置された【黒い三角定規・特別対策本部】その人員は、上記の理由から高木の数学ソフトに触れていない、すなわち数学に疎い者たちばかりが集う結果となってしまう。

「数学を理解しないものに、われわれを止めることはできないだろう」

 その高木の言葉と、立て続けに起こる連続殺人事件に追いつめられる対策本部だったが、ついぞ千葉県警が見つけてきた「数学大得意な救世主」は、中学2年生の女の子・浜村渚(はまむら なぎさ)だった──というお話。


 数学嫌いの自分が読んでも拒絶反応が出るような事はなく、数学のアレコレがうまく話に盛り込まれていたと思うし、「0で割ってはいけない」など知らない数学知識も出てきて(思わず自分でも電卓弾いてみました😂)その辺りは大変興味深く読みました。


 他方、初っ端から大分ぶっ飛んだ設定(義務教育から数学が排除されてたり等々)で、多分本作はコメディ寄りの作品として読むべきなんだろうな……とは思うものの、今、まさに次々と殺人事件や拉致事件が起こっているというのに、警察組ときたら信州土産のわさびスナックが辛いだのアップルパイを食べた時に生地がぽろぽろ落ちるのが気にくわないだのと、あまりに緊張感がなさ過ぎて流石にどうなのだろうかと不謹慎振りにモヤモヤ。

 これが、人の生き死にの関わらない、高木と浜村の純粋なる数学対決──とかだったら、もっと素直に読めてたかもしれないかもな、などと。


 また、全4話からなるオムニバスで、1~3話までは余りそうは思わなかったのですけど、4話目の円周率の話は設定ありきというか、ちょっと作為的に過ぎる(円周率10万桁まで暗記してるけど何の役にも立たないと捻くれてるキャラ登場→体よく円周率をコードネームに使用する海賊団登場→円周率も役に立つじゃない! な流れ)印象で一気に白けてしまった。先述の「0で割っちゃ、だめ」の件は凄く良かったのになぁ。


 面白くない訳じゃないけど、何かと数学に結び付ける強引さ、事件の凄惨さに対しあまりに脳天気で浜村頼み過ぎる無能な警察組等々、個人的にはリアリティの甚だしい欠如(鑑識23班とか)と一部倫理観の無さに終始引っかかりを拭えなかった1作。

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