【⭐️2】その可能性はすでに考えた
【その可能性はすでに考えた】井上真偽 作・講談社文庫 2018/02/15(個人的評価:⭐️⭐️☆☆☆)
この作者は【アリアドネの声】から入ったからか、無意識にSF寄りの社会派な内容を期待してしまったのですけど、その先入観でもって手に取り(どちらかと言えば悪い意味で)面食らった1冊。
かつて山村で発生した新宗教団体の集団自殺。
その凄惨な事件を唯一生き残った女性が、自分の朧気な記憶を頼りに、自身があの日殺人を犯したのか推理して欲しいと、探偵・上苙丞(うえおろ じょう)の元を訪れる。
話を聞く限り不可能犯罪としか思われない状況に、「考え得る全ての可能性を否定できれば、それは『奇蹟』たり得る」と言ってのける上苙だが──というお話。
とある事情から、探偵役の上苙は『奇蹟の証明』に執着しており、必然、自分の推理を積極的に披露してゆくというより、他人の仮説や推理を論破してゆくというストーリー運びになるので、致し方ないのでしょうが……それでも、「ならば私の仮説に反論できるかな!?」と次々現れる対戦相手(?)の登場っぷりに、各登場人物の冗談みたいな設定も併せ、これはもうミステリとか探偵小説というよりバトル系少年漫画なのでは……? と開幕大困惑。
特に、2人目の刺客(?)が仕掛けたトリック(※物理)なんて、もはやドリフのコントばりな内容で、えええ……?(白目) 状態。
また、パートナー役? が中国人なので中国語や耳慣れない言葉もしょっちゅう出てきて──都度、解説は挟まるので内容が理解できないという事はないものの、それでも……何というか……例えるなら、素直に日本語で言えばいいものを何故か要所要所をわざわざ横文字(カタカナ語)に置き換え話すが故に内容がまったく頭に入ってこない政治家の迂遠な弁舌、みたいな印象というか。中国語の台詞や諺が出てくるたび読解に躓くので、もうちょっとスムーズに読みたかったというか。
パートナー役が中国人である必要性が感じられる内容であればまだしも、少なくとも自分にはあまりそれが感じられなかったので、余計に……うーん、何だかな、な印象。
ただ、シリーズ作品として展開していく気配があるので、今後の流れ次第では納得できるようになる……のかも?
⚠️以下、ネタバレ注意⚠️
そも、依頼主の渡良瀬莉世(わたらせ りぜ)が集団自殺事件の折に本当に人を殺したのかどうか? を解明するのが話の本筋のはずなのに、複数人の手による推理バトルにて「この事件は人の手によるものなのか、それとも奇蹟なのか?」を軸に論点があちこちバラけるからか、最後の論戦が終わった後「……ん? いや待て、結局『この人に殺人は不可能です』な話ばかり論じて終わりとか、事件の真相解明は一体どうなったんですか、ね……?(白目)」と途方に暮れたり(※最後の最後で上苙が添える程度に真相を推理しますが、本当に取って付けた感が何とも😅)。
本作に限らないことではありますが、読者の予想を裏切らんとするあまり、話の枝葉を伸ばしすぎて(トリックを何重にも仕掛け過ぎて)肝心のシメのインパクトがすっかり弱まってしまうの、本当に悪手だと個人的には思うんですけども😓
逆に、多少設定や仕掛けが複雑でも話に1本太い芯が通っていれば、それだけでも随分読みやすくなると思うのですが。
そういった点では【アリアドネの声】がトリックからオチから(自分的に)素晴らし過ぎたが故に、本作に寄せた期待も大きかった分、落胆も大きかったのかなぁ、などと。
最も、本作はデビュー間もない頃の作品のようなので、今後に期待──ですかね?