【⭐️3】コンタミ 化学汚染
【コンタミ 化学汚染】伊与原新 作:講談社 2020/11/13(個人的評価:⭐️⭐️☆☆☆)
慶成大(けいせいだい)の大学院生・町村圭(まちむら けい)と指導教員・宇賀神崇(うがじん たかし)は、疑似科学批判派の急先鋒、東都(とうと)工科大学が教授・蓮見周(はすみ しゅう)より、桜井美冬(さくらい みふゆ)の消息について問われる。
将来を有望視されていた研究者である彼女は、宇賀神の同期であり思い人。そんな、誰よりも疑似科学を嫌っていた彼女が、あろうことか、癌をはじめとしたあらゆる病気から環境浄化にまで効くと謳う〈万能深海酵母〉なる疑似科学商品の開発に携わっていたらしいというのだ。
彼女が自身のキャリアを棒に振ってまでそのような愚行に及ぶとは到底考えられない──宇賀神は圭と共に彼女の消息を追うことにしたのだが──というお話。
先般読了した【磁極反転の日】同様、作者が本作を通じ読者に伝えたかった/訴えたかったであろうテーマは実に明白。
時に人の人生を狂わせる疑似(エセ)科学を盲信することへの警鐘と、疑似と分かっていながら、それでもすがらずにおれない人々の感情的心理的葛藤など、考えさせられたり共感するところ(彼女の母親ときょうだい全員が医療関係者という幼馴染みがいるのですけど、その母親が癌を発症した際、彼女ときょうだいが怪しいサプリメントや健康法といったあきらか信憑性の薄いと思われる民間療法を手当たり次第母親に勧めていたらしい話を耳にした際、「医療関係者なのに、そんなあやしい療法を勧めるとかあるの?」と疑問に思ったのですが、信憑性云々ではなく「少しでも効く可能性があるならば」と藁にもすがる思いだったのだろうと、本作を読み改めて。因みにその母親は無事癌を克服しご存命です)もあり──語り口がやや説教じみているきらいはあるものの、そういった面では有意義な読書だったと感じます。
他方、エンタテインメント作品として触れた時にどうか、と問われると、こちらは正直かなり微妙という印象。
全編通し物語に起伏が少なく終始退屈な展開、宇賀神も典型的なステレオタイプ(天才肌だが気難しく自己中心的で横暴。美冬という思い人がいて実際何度も告白しておきながら、自身の研究生は女学生ばかりとり合コンでも若い女性に現を抜かすという女好きっぷりは唯々不快)だし、圭の方もこれといった特徴や個性のない無味無臭っぷり。その他登場人物も皆どこかで見たことのあるようなタイプばかりで──
何より、合コンに参加した女性が総じてオツム弱めっぽく描写されていた(口を開けば「えー、すごーい!」「なにそれ、わかんなーい!」ばかり)のには閉口。このあたり、作者の『合コンに参加する女性は皆大体この程度』的偏見が大いに含まれているように感じたのは自分の邪推でしょうか(もっとも、自分は合コン経験皆無なので実情は分かりませんけれども)。
主要人物からモブまで、総じて「こういうキャラはこういう性格にこういう口調が当たり前」みたいな作者の思い込み或いは決め付けのようなものが随所に窺えた点は非常にマイナス。