【⭐️4】掟上今日子の備忘録
【掟上今日子の備忘録】西尾維新 作:講談社文庫 2018/7/13(個人的評価:⭐️⭐️⭐️⭐️☆)
掟上今日子(おきてがみ きょうこ)は忘却探偵──
ひと度眠るとそれまでの記憶がたちまちリセットされてしまう置手紙探偵事務所所長・掟上今日子。それ故、彼女は当日中に事件を解決するスピーディさを持ち、前向性健忘と思われるが故に絶対的守秘義務厳守が約束されているという、変わり種ながらに優秀な探偵である。
隠館厄介(かくしだて やくすけ)は日々何かとトラブルに巻き込まれ、昔から事件が起きるたび決まって容疑をかけられてしまう。
その日も、つい2ヶ月前から勤め始めた職場で盗難事件発生、犯人を疑われ、冤罪を晴らすべく掟上に捜査を依頼するが──というお話。
先に散々酷評した【コズミック/ジョーカー】で「この作家(清涼院流水)の作品は二度と読まない!」と憤慨した訳ですが、「清涼院流水を信奉しつつ、知名度も作品のクオリティも彼を追い抜いている点は興味深い」などと評される後進作家の一人という事を知り、怖い物見たさで手に取った1冊。
登場人物の名前(特に隠館)が奇抜だったり、掟上の設定がかなり特殊だったりはしますが、正直、良い意味で思った程ぶっ飛んだ内容では無かったというか、普通に安心して読めるクオリティの作品で虚を突かれた、というのが正直な感想(どれだけキワモノを予想していたのだろうか自分は)。
⚠️以下、ネタバレ注意⚠️
多少、不納得な点もある──眠るとそれまでの記憶が綺麗さっぱり無くなるはずなのに、自分の全身(腕や足、腹など)に直接メモされた『記憶を失う前の自分が書き記した備忘録』の存在は覚えていて、覚醒後すぐにメモの内容を確認する件など(入浴や着替える際に体中に書いたメモがたまたま目に付く、とかなら全然分かるものの、起床後、即、衣服のあちこちを捲りメモがないか確認しているシーンがある)、前向性健忘らしいという事から以前は記憶を喪失する症状も無かったと思われますが、とはいえ『眠って記憶を失っても大丈夫なように体中に備忘録を書き留めておく』というルールを設けたのは恐らく前向性健忘を発症した(記憶消去に悩まされるようになった)後でしょうし、ならばどうやって『体中に備忘録を書き留めておく』事は記憶していられるのか? という──ものの、トリックや話の流れ等は概ね納得できる内容。
一部、メタ的な展開(「犯人が禁じ手を使うなら、こちら(探偵)も禁じ手を使うまで」と、地道な推理ではなく大胆に鎌を掛けてみたり等)もありますが、それも作品への没入感を削ぐ程では無く、許容範囲内かなと。
それに、1冊5話掲載のオムニバス形式(連作)で、テンポ良く読めるのも好感。
内容はというと、掟上さんはなかなか良いキャラをしているのですが、一方で、隠館は人物像がやや掴みづらい。
職場や掟上さんの前だと丁寧語で腰が低く気弱なのかな、という印象を受けていたのですけど、2話目で元上司の紺藤(こんどう)を相手に、突然ワイルドで砕けた口調(「~だぜ」等)で会話し始めたのには「何この唐突なキャラ変!!?」と驚愕。
かつて職場で(いつものように)トラブルの容疑を向けられた隠館を唯一庇ってくれた恩人という事や、年齢を超えた信頼関係がある──にしても、そんな恩人でしかも年上の元上司に対し、こんなにも気安く冗談言ったりタメ口で会話できるものなの、か……? そうでなくとも、今尚、トラブル起こる度職場を辞めさせられては都度新たな仕事を世話して貰っている身だというのに。
この、紺藤とのやり取りにおける隠館の言動には終始違和感拭えず。
とはいえ、基本的には皆好感なキャラなので読んでいて然程不快感も無いですし(紺藤さんホントめちゃくちゃ良い人!)最終話はまさかの涙腺刺激され、思わずうるりと来てしまったり。
どうやら続き物らしく、多くの謎を残して終わったので、これは2巻以降も追いかけてきたい所存……!