【⭐️2】帝都妖怪ロマンチカ ~猫又にマタタビ~

帝都妖怪ロマンチカ ~猫又にマタタビ~真堂樹 作:集英社文庫 2019/4/19(個人的評価:⭐️⭐️☆☆☆)


 昭和初期の東京、猫又の弐矢(にや)は、かつて愛した女性・チカに瓜二つの美貌を持つ青年・折原嘉寿哉(おりはら かずや)を見初め、彼の家に居候として転がり込む。

 老い先短い余生、大好きなチカと同じ顔を持つ嘉寿哉の膝の上で看取られたいと願い甲斐甲斐しく彼の寝食を世話する弐矢であったが、変態心理学を究めオカルトを糾弾せんとする嘉寿哉の周りには、次々と妖怪たちが引き寄せられてきて──というお話。


 レトロモダンなオカルトもの? という印象と、カバー絵に惹かれて借りた1冊でしたが、中身はかなりBL臭のする作品でげんなり(※セシルはBL/GLが大の苦手)

 男子同士の肉体的交わりその直接的生々しい描写がギリ無かった(と言って良いのかどうか)ので辛うじて読み切れましたが──それにしても、主要登場人物はチカ、ろくろ首の於六(おろく)を除き男性ばかり。


⚠️以下、ネタバレ注意⚠️

 そも「チカと恋人同士になれなかったのは自分が猫の姿だったからだ」と後悔しながら、嘉寿哉の元に転がり込むに、態々愛するチカ(女)の体を捨てた(「借り受ける人間の身体は20年かそこらが限界〈傷みが激しくなったり、20年以上人間を喰らわないと霊力が尽きてしまう的な意味合いで〉」というような事が作中語られていたように思うので、20年前に借り受けたチカの体に限界が来ていた、という事なのかもですけれども)のみならず、そこで女ではなく弁天四郎(男)を喰らい男の姿になったのが先ず以て理解できない。

 嘉寿哉が極度の女嫌い或いは男色家、同性愛者といった設定でもない限り、取り入るなら女姿の方が都合が良かったのでは? と。


 そんな弐矢(雄)が嘉寿哉(男)にぞっこんなのは百歩譲って「猫又は性別にこだわらない」という設定なのかもと何とか割り切るにしても、初手いきなり嘉寿哉が女装して登場したり、別にそのまま女給設定=女でも話の流れ的に問題無さそうなのに紫夜(しや)を敢えて「美少女と見紛うほどの美少年」としてみたり(※後に「変成男子(へんじょうなんし)」=仏典にある言葉で、女性のままでは成仏できない竜女(りゅうにょ)が、一旦男子の身に生まれ変わり仏になる事、という件が出て来たので、その関係かもしれませんが)、主要男性キャラは軒並み中性的美人か美丈夫、そして何かとそんな男同士の絡みばかり描写している辺り、どうしても作者はそちら界隈の人間なのだろうかと訝ってしまう。

 嘉寿哉が男性の依頼人と話し込む度に弐矢が嫉妬するシーンは何十頁も割き執拗に描写されているのに、嘉寿哉が彼に片思いしている女性と会話する数少ないシーンでは(その場に弐矢は同席しておらず、嘉寿哉自身も色恋沙汰に全く疎いと見えて)僅か十数行で片付けられてしまっている辺り、余計にそう感じてしまうのですが──


 自分が殊更BL嫌いという事もあって、斜めに見すぎてるのでしょうか……?


 他方、昭和初期という設定を鑑みた時代劇めいた言い回しは大いに好みな一方、地の文が「比喩が用いられていない箇所の方が少ないのでは」と思われる程に過剰装飾気味で、それら婉曲的な表現がしばしばもどかしく感じられたり。

 ここを「まどろっこしい」と感じるか「叙情的」と捉えるかは人それぞれかなとも思うのですけど、こういった比喩表現は『ここぞ』という箇所に絞って用いるからこそ効果的だと自分は考えるタイプだし、そうでなくとも、既に描写済みのあれこれ(主に男性キャラの容姿端麗さをして)を何度も何度も繰り返し描写しているので、個人的には正直かなりクドいなぁと。

 後、「ヨカナーンの首」など、ある程度の知識や教養がないと、ちょっと何言ってるか分からない(前後の文脈から意味するところを推測するのも難しい)です的表現も散見されるので、都度意味を調べたりして読書の流れがちょくちょく遮られるのも、ちょっとなぁと思わないでも(自分の浅学が原因なのですけれども)

 文章自体は比較的理路整然としている印象なので、そういった意味では寄り道や無駄は少なく、読みやすい方だとは思うのですが──


 肝心の話の内容としては、長編の起承転結の【起】も【起】の部分、まだ何も片が付いていないし、何なら物語は始まったばかり──という印象。

 1冊目たる本作は本編300頁弱と然程長くは無いものの、体感その半分以上が嘉寿哉の一挙手一投足に弐矢がいちいち勝手に惚気たり嫉妬したりの内容で……う、ううん。「これはBLではないのか?」という先入観を無理矢理排除すれば、弐矢と嘉寿哉のそれは飼い主と猫の微笑ましい関係……とも、とれなくは、ない……のかも、ですが……只、こういったBL臭を感じながら尚、2冊目以降も読もうと思えるかというと──弐矢と嘉寿哉のいちゃこら以外の部分もそんなに面白いとは感じなかったし、遠慮しておくかなぁ。


 ここはもう、完全に嗜好の問題ですね。

 同性同士が恋愛関係になる流れに相応の説得力(例えばLGBTの現実をリアルに描写しているだとか)を見出せればともかく、単に作者の性癖で同性同士がくっつけられてるのかな、と感じられる作品は、個人的にはどうにも受け入れがたいものがあります。

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