【⭐️3】亡霊星域
【亡霊星域】アン・レッキー 作/赤尾秀子 訳:創元SF文庫 2016/4/22(個人的評価:⭐️⭐️⭐️☆☆)
星間国家ラドチで内戦が勃発。
誰が敵か味方かも判然としない困難な状況下で、ラドチの絶対的支配者・アナーンダから艦隊司令官に任じられたブレクは、〈カルルの慈(めぐみ)〉の艦長としてアソエク・ステーションへと向かう。
任務は、アソエク星系の防衛。
だが任地到着早々、味方艦であるはずの〈アタガリスの剣(つるぎ)〉が臨戦態勢をとってきたのだった──というお話。
初っ端から専門用語や固有名詞が何の説明もなく飛び交い、基本的に相手の性別関係なく人称に女性形(彼女/母・娘/姉・妹など)を用い読者に登場人物の性別を予想させない語り口は前作同様。
巻末の解説曰く「一般的な男女のイメージを投影し読もうとすると様々な混乱が生じ、必然的に読者のジェンダー観が問われることとなる」とのことだが、それならば性別に依らない表現(例えば「あの人」「親/保護者」「子」など)を用いるべきであって、わざわざ男性形を排し女性形を用いるところに女尊男卑のような気配、あるいは価値観の押し付け感を否めず個人的には不快(嫌がる相手に『性別らしさ』を要求することは言語道断としても、作品を読み進める中で「このキャラは男性/女性だろう」と読者が推測する行為すら否定するのは、前者に等しい横暴に過ぎるのでは、などと)。外国語にはまったく疎いため、男性形と女性形とが明確に区別される言語において中性(あるいは中立)を示す表現が存在するのかは分かりませんが、例えば英語圏でも『he(彼)』『she(彼女)』に対し中性的人称として『xe』のように造語を用いる作品も存在するようなので、真に中立的な表現はいくらでも追究できるはず。
また、こちらも前作同様、全編通しほぼ会話劇で盛り上がりに欠ける印象。
第一印象が最悪だった人物と様々な出来事を経て互いに態度を軟化させた──と思いきや最後の最後で決裂したり、逆に絶対相容れないと思われた人物同士があっさり和解したり、そのような複雑な人間関係(あるいはストーリー展開)が幾重にも折り重なっており、結果、互いのストーリーラインのメリハリを相殺し一層平板に感じさせている、という印象も。
加えて、個人的には登場人物いずれにも魅力も好感も持てないのが、物語への没入感を阻害している感も。特に経緯や何も描写されてないのに、突然、恋愛展開になるのも(本作に限らないことだが)一体何なのだろうかと。
ただ、キャラクター自身の魅力にいまいち繋がってる感はないものの、ブレクの、冷徹さから垣間見える公平性や真摯さが伝わる台詞は印象的。それだけに、言動がどうしても偽善的に映ってしまうのは残念。
あと、タイトルが本作の内容とは微妙にずれている感が如何とも。タイトルからして『ゴースト・ゲート』にまつわる何某かが話のメインになるとばかり思っていたが──その辺りは次巻に持ち越し、ということだろうか。