【⭐️3】歌う船[完全版]
【歌う船[完全版]】アン・マキャフリー 作/嶋田洋一 訳:創元SF文庫 2024/7/12(個人的評価:⭐️⭐️⭐️☆☆)
素晴らしい頭脳と奇形の肉体を持って生まれた少女はヘルヴァと名付けられ、〈中央諸世界〉によって宇宙船の身体を与えられた。〈頭脳〉と呼ばれる彼女らは〈筋肉〉と呼ばれる乗務員を自ら選び、様々な任務に就くことになる。
ヘルヴァはひと目惚れした〈筋肉〉ジェナンと共に広大な宇宙へと飛び立つが──というお話。
30~110頁程度の短編8本からなる連作で、様々な出会いと別れを経て無垢な少女から成熟した女性へと成長するヘルヴァの姿を描く。
ジャンルはSFだが内容的には恋愛がメイン、というべきか。
如何せん、ほとんどが1話100頁にも満たない短編なので、1話目『船は歌った』の衝撃的(というか呆気ないというか)な展開を除き、いささか掘り下げが足りないなど淡泊な印象が拭えない。特に、最後に選ばれた〈筋肉〉とヘルヴァの関係が「え、いつの間にそんな関係になってたの?」というぐらい唐突で置いてけぼり感が凄まじかった。最初の〈筋肉〉であるジェナンとの関係が(頁数の割に)丁寧に描かれていただけに余計。
また、自分の読解力の問題か翻訳の問題なのか、度々文脈が通っていない、会話が噛み合っていない(と感じられる)部分も散見され、内容がなかなか頭に入ってこないという場面も。
故に、頁数の割に良くも悪くも1話1話が長く感じられ、短編集の割にあまりテンポ良く読み進められたという印象もない。
自分が基本、恋愛ものに余り興味も共感も持てないので評価は低めになってしまうが、初出が1961年であることを考慮すると、当時にしてはかなり先鋭的な作品だったのではないかと推測されるし、今読んでも(少なくとも自分は)そこまで古臭さを感じなかった。
設定自体はユニークだが、登場人物いずれにもこれといった愛着や好感を持つことなく淡々と終わってしまったのは残念だが、外殻人となったことで数世紀を生きることができるヘルヴァと(現代人よりいくらか長命であるとはいえ)100年かそこらしか生きることのできない非外殻人(人間)との在り方には色々と思うところもありしんみり。